il a renonce a tout ce qui faisait de lui un pere.
紅い花
2.
昼下がりのセックスのあとは、いつも気怠く物憂い。
傾いた陽光や街の喧噪で、すぐに現実へと引き戻されるから。
しかもそれが、「こないだ彼女に死なれたばかりの元彼氏」とした後だったりすれば、尚更とんでもない。
まあ、ゴンが果たして俺の「彼氏」だったことがあるのか、という問題はこの際脇におくとして。
「俺、なんで親父が俺を置いていったか、よくわかったよ。」
Tシャツに腕を通しながらも、俺は動きを止める。今、このタイミングでゴンからこういう台詞をきくのは、さすがにしんどいと思った。なんと答えていいかわからず、黙っていると、ゴンが言った。
「キルア、ごめん。」
「なんだよ、なんで謝るんだ。」
「…わからない。うまくいえない。でも、ごめん。」
ものすごく硬い表情で、視線を落として、拳をぐっと握りしめている。今にも泣きそうで、でも全然涙は出なくて、ただうちひしがれている様子が痛々しい。
乱痴気騒ぎの後我に返り、彼女のこと、さっき俺としてたこと、その両方を思って感情的にも滅茶滅茶になってる感じだった。
「やめろよバカ。ごちゃごちゃ考えるな。そーいうの、お前ぜんっぜん似合わないから。」
本当にやめてほしい、と思った。彼女にそういう顔して謝るのはいいけど、でも俺にまでそんな表情するのはたまらない。これじゃまるで、憂さ晴らしで手ェ出した女に謝る男の台詞聞いてるみたいだ。
俺が「受け」たからって調子に乗るな。逆だったらお前痛がって無理だろ。どうせ。成り行きでこうなっただけだ。この俺を壊れ物扱いするなんて、一万年早え。
「気がまぎれればそれでいーじゃん。深く考えるのやめろ。辛いんだろ今。」
それでも神妙な顔して黙ってるから、こんなのはゲームと同じだ、やってスカっとすれば、それでいーんだ、と念を押してしまい、ちょっとくどかったかなと思った。これじゃまるで、気にしてるみたいだ。
涙流したりしたのがまずかったのかな。確かにあれはムード出過ぎて、自分としてもちょっと失敗だった。しらふに戻った今となってはなかったことにしたい。
そして思う。
死んだあいつの彼女と違って、俺はなんて便利な存在なんだろう。女じゃないから孕む心配なし、何より強いから自分で自分の身だって守れる。しかも、互いに互いの仕事もよくわかってる。やりっ放しで放っておいてマジに問題無しってわけだ。
そういえば、独身のハンターって多いな。んでもって、カップルになってもハンター同士がほとんどだ。今気づいた。更に子供持つヤツとなると、すごい少ない。男も、女も。養子縁組も含めて考えてもそうだ。
ゴンだって、親父に何故捨てられたか、今頃わかったような気分になってるしな。
……繋がっちゃいけないって、ことなのかな。俺たち。
ふと、窓の外を見た。
ベランダの鉢植えに、あの小道と同じ紅い花が咲いていた。
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