l'enfant, tu etais encore trop petit pour rire de l'amour, mais meme cela tu ne le savais pas.
群青
3.
俺の休暇は一週間あり、その間、キルアはまるでそれが自然な事のようにずっと俺の家に居た。
そして二人、憑かれたように交わった。狂気の沙汰。
愛や恋、という単語もつとめて口にしないまま、ただ互いを知ることのみで明け暮れた。
そしてついに、八日目の朝が来た。
もう何度目か数えるのも忘れたセックスの後、仮眠とって寝不足の頭であいつは出発の支度を、待ってる俺は朝飯の後片付けをしてた。朝早くに出て行くと言い出したのはキルアの方だが、俺も9時から授業があって、どのみちそれ以外選択肢は無かった。
午前7時。冬は終わりに近づいても北国の夜は長い。窓を見ればまだ、あいつが来た夜のような色の空が広がっている。
ふと、水が欲しいと言ってキルアが流しの横に並び、俺を見上げた。
「あんた身長いくつ?」
193だ、と答えると、でかいな、とため息に似た声。何、お前もそのうち大きくなるさ、と何の考えも無しに俺は答えた。
そういったらヤツが、奇妙な笑い声をたてる。
「何だ、どうした?」
「いや、そんなこと言ってあんた、俺がごつかったら勃たない、そういうタイプだろうなって思ってさ。」
一気に水を飲み干し、濡れた唇を拭って皮肉気に微笑む。
「自分より小さい、カワイ子ちゃんが好きだろ?」
違う、と俺は言おうとして、止まる。何を証せばいいのだろう。確かに俺はゲイではなく、しかもまだガキでしかないこいつの身体で楽しんだ、その事実の前で一体、何を。
ぼんやりとしてたら、やべ、もうこんな時間か、といってキルアは部屋の隅に置いてある荷物を見た。午前中の飛行船は本数が少ない。そのまま、ふいと側を離れ、行こうとする。
「俺は、」
咄嗟に声が出た。床に置いてあるリュックを持ち上げようとしたキルアが立ち止まり、振り返る。
スローモーションのようにその表情が俺の網膜に焼き付く。
次の瞬間、あまりにも唐突に、とんでもねぇ台詞が口をついて出た。
「お前の事、愛してる。」
呆然と、俺を見るキルア。俺も自分で驚いた。
まるで己の意志を離れたかのように口が動き続ける。
「愛してる。多分、これからもずっと。」
言ってしまって、その月並みさ、そしてグロテスクさに茫然自失となった。
例えそれがいかなる真実を孕んでいたにせよ、俺はいい年の大人で、こいつはまだ子供でしかない。その現実が改めて胸に突き刺さる。
しかしそのとき、驚いた変化が起きた。
気怠げで人を小馬鹿にしているようでさえあったガキの顔に、ぱっと血の気が差したんだ。唐突に。
「…バッカじゃねぇの。」
ぼそりとつぶやき、そのままそっぽを向く横顔。少し猫背、いつもみたくポケットに手を突っ込んでる。でも隠しきれないのは、すっかり桃色に染まった頬と、耳。
…まさか。
瞬間、俺の胸はひどく痛んだ。
お前は———これが欲しかったのか?
(ぬくもりと優しさ、永続性の約束)
万が一にも、あり得るはずがないと思っていた。
何度も夜を重ねた肌、完璧な媚態と技術。
劣情を暴かれ翻弄されたのは俺の方で、ヤツからすればマヌケな大人に仕掛けた暇つぶしのゲームでしかないと信じて疑わなかった。
だけど…。
駆け寄る。俺の手にはまだ洗剤がついていて、キルアはうつむいたままこちらをみない。
その斜め横顔があまりにも儚げで、幼くて、揺れる瞳は潤んでいるようにさえ見えたのは俺の気のせいか。
何も言わず、何も言わさず、細い身体を抱きしめた。
何度も抱き馴れたはずの身体を、きつく、強く。
痛ぇよ、この馬鹿力、と胸の中でくぐもった声がするのを聞きながら、うるせえ、と天井を向く。
ガキは生意気な事を言いながらも、一息つくとぎゅっと俺の背中に手を回してきた。
その感触に不覚にも涙が出そうになるのを、こらえる。
感じたのは単純な愛しさ、ではなかった。
(それだけなら、どんなに良かっただろう。)
このスレて、天国も地獄も知り尽くしたような顔をしたガキが見せた思いがけない反応に、初めて、痛ましさにも似た感情が突き上げたからだ。
なんで、お前はそうなんだ。
ガキのくせに。
俺の無様な愛など、キモいとでもいって即座に鼻で笑ってくれた方が良かった。
(ごくごく普通の平凡な子供がするみたいに。)
その方がまだ、見てるこっちも救われた。俺はきっと、笑ってお前に手を振り見送っただろう。
兄のように、また見守り続けるために。
そう、後戻りだって…出来たんだ。
だけどもう、遅い。
銀色の柔らかい毛をなでた。キルアはすっかり俺に身を委ねている。
こいつはこれからどうなるんだろう?
そして俺はどうするんだろう。
黙っていたら、今度はキルアがぽつりとつぶやいた。
「また…来るよ。」
やっとのことで、そうだな、と答えた。
窓の外、霞む視界の中に、薄れゆく夜の名残の群青を見つめながら。
END
【作者後記】
12345キリ番リクは該当者がいなかったので、近い数字を踏まれた櫻子様に捧げます。お題は「レオキル」。遅れに遅れましたが、サイト開設一周年までになんとかうpすることが出来ました(汗
はじめてのレオキル、新しい境地でした…。微妙にゴンキル前提っぽくなってしまいましたが、その辺はぼやかしたつもりです。というか、ほんとは前提無しの純粋レオキルに挑戦したかったのですが、どうも後一歩という感じですね。面目ないですorz
それと……レオリオがあんた誰って感じですね(汗
何でもかんでも似非シリアス風味全開にしてしまう自分が激しく呪わしいです。
でも、これまでに拝読したレオキルものが全て素敵すぎて、なんだか自分に書けるものってあまりない感じがしていまして結局こういう道に…。
色々な意味で拙い作品ですが、受け取って頂ければ幸いですm(_)m
なお、他のSSではキルアの瞳が「碧」なのに、このSSで「青」もしくは「群青」なのは、単にこないだ似たような色の空を見て萌えてしまったというのがあ
るんですが、あとなんとなく、ゴンキル前提でクラピカにも甘えるこれまでのキルアと区別したくなったからというのがあります。まぁ、別バージョンキルアと
いうか…(とはいえ、話がつながってるとしか思えないネタで書いてしまいましたが。カジノとか…。)
性格設定とか特に詳しくはしてませんが、何となく、こちらのキルアの方が甘えん坊度は高いかもしれないです。「碧目」の方はクラピカと「傷の舐め合い」をしてるわけですが、「青目」の方はレオリオにかなり一方的な「包容力」を求めてる感じがするので。
それにしてもこの設定だと、この後レオリオが背負うもの(感情的にも社会的にも…)を考えると結構笑えないものがありますが(汗
ってまぁ、妄想ついでに語ってみました。(2006/2/26)