l'ame impenetrable. l'horizon ou je ne parviendrai jamais......l'eternite.

供物

3.


こうして、半月の夜に子供を抱いた。
腕の下で呻き、瞳を閉じたまま笑うのをみた。

それからずっと、まるで何かを埋めようとするように、自分の何かを殺してくれとでもいうように、子供は身体を差し出し続けている。
祭壇に生け贄を捧げるかのごとく。

自分はといえば、あのとき偶然通りかかったという只それだけの事実により、その供物を貪り続けている。

遠慮などするわけない。
もともと奪うことが本分だ。
形あるもの、手に入るもの全てを。



だが、形無きものは奪えない。
追えば追うほどに遠ざかる。
唯一出来るのは、壊すことだけ。
――――その容れ物ごと、ひとおもいに。

奪えるもの、奪えないもの見極めが大事。
無駄な挑戦を、破壊を避けるための原則。




月を見たカルトの瞳から刹那に透けてすぐに消えた感情が何であったのかは、どうでもいいと思った。その後も何度か偶然のような機会を捕まえては寝たが、意図や感情について問うことはなかったし、これからもないだろう。

愛情であろうが反感であろうが子供の気まぐれな心につきあうほど暇でもなく、そもそもそんな情けがあれば、あの様な年若い者を森で組み敷いたりなどしなかったのだから。



だが時折、くだらない絵に耽溺する程度には自分も余分な感性を持っているのだと認識させられ、苦笑することがある。

例えば、目の前の現実を拒むかのように子供が堅く瞳を閉ざすたび、
そのまなざしが自分を通り越し彼方へと向かうたびに、
情欲に火がつく。
他愛も無く心が騒ぐ。
まるで何かに煽られているかのように。





(昔から、不可侵の領域を持つ者に心惹かれた。)
(責め苛むことを生業とする日々の中、)
(最後の最後まで意志を、心を手放さぬ者を、何度葬った事だろう。)
(そしてその死に顔は、どれもひどく美しかった。)




(己には永遠に辿り着けない場所を思わせるからだ。)
(追いかけるほどに遠ざかる様な、)
(……彼岸。)








空の向こうに何を置いてきたかは知らない。
目を閉じて存分に想うがいい。弔うがいい。
自分は只、投げ出されたその白い身体を貪るまで。



あの絵で見た少女にも似たお前を、人形のごとく両の腕にかき抱く。

その歳を知ろうともせずに。





END




【作者後記】
お粗末様でございます。とりあえず、妄想100%で書ききってしまいました。前に書いたSS「月光」のフェイタンサイドみたいな位置づけですが、何かわかりにくいものになってしまいました…。
フェイタン激しく別人気味だし一言もそれらしい台詞を喋りませんしね…。
もし寛大にもお読みになって頂けた方がいらしたら、心より御礼申し上げますm(_)m
管理人にとってのフェイタンの脳内設定…ご覧の通りけっこー変です。キてます。この話では特に無駄に込み入った思考回路の人になってますが、何か画集とか見ちゃうし、要は結構耽美で繊細なヤツだったりするのかなー、という勝手な萌えがあってこういうのになりました(…しかも、微妙にネクロフィリアの片鱗が……(汗))。彼は基本的に冷めて残酷なオトナの人ですが、美しいもの(外見だけなく、その器を持つ者の精神性も含め)には大変敏感に反応する感性を持っているのです。あと、「自分に嘘をつける」のは彼自身のことでもあるでしょう。いや、歳若いカルトのおよびもつかないほどに彼はその技術を極めてすらいるでしょう。

あっ…カルトの年、「子供」言ってますが、実際には13−15歳はいってるものとして書いてます…。性別が微妙だから少女とかいえない、だからそう書くしかないというか。(それでもヤバいですけど。)
なお、誘惑に勝てず勝手に「身体に手を加えられていた」設定にしてしまったのも大懺悔です。これでトランスな人(←いわゆるニューハーフとかのことです)になってしまいました…(滝汗 (2006/3/8)

*一度うpした後、表現がおかしいところがあったのでいろいろ訂正しました。すいませんm(_)m(2006/3/8)