Well I had a dream I stood beneath an orange sky with you standing by....

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  One  

3.

「あ…ぁっ」

顔を覆ったまま、すっかり柔らかく熱くなっていた渚のそこに自身を飲み込まれて、呻く。
上に乗ってる相手の身体は自分と同じくらい重くて筋肉のついた骨格を感じる。だけど滑らかな肌が吸い付くようで、余計な事が考えられない。
というより、考えたくない。
もう嫌だ。いたたまれない気分。このまま、どこかに消えてしまいたい。

「あ…は、入ったね。」

声がして、指の隙間から見た。僕を見下ろす渚の顔。

「すごいや…熱い。」

何かに耐えるような切なげな表情で眉を少しひそめ僕を見る、その様子を恐ろしく色っぽく感じて、ますます自分が嫌になる。

「…一つになるって…気持ち、いい…ね。」

そのままため息のような吐息を漏らして嬉しそうに眼を閉じ、ゆっくり動き始めた。

くそ。
何でこうなるんだ。

恍惚とした表情の相手に魅せられたのが憎らしいのとよくわからない熱い感覚とが身体の奥からこみ上げて、腹立ち紛れに下から突き上げてやった。
すると、あっ、と鋭い声をあげて相手が反応する。少しだけそれまでの敗北感がかき消えた。
快感が僕の背中を走り、更に攻める。面白いように渚は乱れ大きな声をあげた。

燻っていた感情が攻撃的な気分へと転化し、僕の中で最後の理性のたがが外れる。がばっと身体を起こし、上に乗ってた相手を逆に押し倒した。横倒しになった のを押さえつけてそのまま腹這いにさせたら渚が微妙に尻を突き出すような格好をしたから、有無を言わさず後ろから突っ込んだ。普段の自分から考えられない ような、相手を痛めても構わないくらいの残酷な衝動で、一気に貫いた。

相手が絶叫に近い声を上げたから、うるさいと叫んで後ろから口に指を詰め込んだら噛まれた。痛い筈なのに気にならず、痺れるような陶酔感があって余計に狂う。

その後向こうが咳き込んだから流石にちょっとだけ我に返って手を抜いたけど、加虐的な気持ちは収まらない。煽られるまま相手を揺さぶり、なじった。まるでさっき自分がされたことの仕返しみたいに。

「こんなことされて…嬉しいのかよ。変態っ。」

「だっ…だからその言葉、意味わかんなっ…あ、あっ…!」

四つん這いになった大きい背中がしなる。汗を浮かべて、微かに差し込む陽光になめらかな光を放つ肌。乱れ散る銀髪。激しい動きの中に時折見える、感覚に溺れ切った表情の横顔。
ほんとこのまま、ぶっこわしてやりたい。

「お前なんか…大嫌い、だっ」

叫んだら、言い返された。

「嫌いならっ…何、こんなことしてんだよっ…」

その通りなのが悔しくてむかついたから、衝動に任せてその白い肩に噛み付いてやった。
いたっ!と声があがる。抗議するように振り向いた眼差しが悩ましくてぞくりときたから、まるで負けまいとするように片手で背中を押さえつけた。更に力任せに奥へ奥へとねじ込んで思い切り突いたら、ひぃ、というような呼吸音まじりの声を上げて渚がガクガク震え出した。

「あ、…っ!やめ…っ!!!」

「何を…だよっ!」

「ひっ……ぅ、あっ…」

突然渚の声音が変わり、僕は少し驚く。

僕に押しつぶされながら、その見開かれた眼が何かを畏れるように虚空を凝視していたからだ。
そして漏れたのは、掠れた悲鳴のような言葉。



「…恐い…っ…」



何を、言ってる?



「ま、だ…い、や…だ……ッ」


恐い?

(恐い、)
(恐い、)
(恐い、)


イクのが?

まさか。

わけがわからない。

(恐い。もうすぐ、そこに、)

「——————ああああ!!!」

渚が声———というか、音、を吐いて、

———終焉、)


「ぐっ…!!」

何かをぶちまけるように僕はイった。

(逝、く。)


瞬間、幻影を見た。
視界にオレンジ色の波が弾けた—————ような気がした。





どうやら仲良く二人ほぼ同時に果てたらしかった。あり得ない。
単純なもので、快楽の波にさらわれたら急に気持ちが凪いだ。ほんの一瞬、優しい気分にさえなった。目の前で喘いでいる奴の汗ばんだ首筋に唇で触れる。ああ、と吐息のような柔らかい声を渚が吐いた。
ひっくり返しても渚は死んだように眼をつぶったまま動かない。気まぐれにこっちから口づけていた。教えられたわけでもないのに自然に舌まで入れたら相手がよ うやくぴくりと動いて、同じように応えた。あ、これってそういえば昨夜に続き二回めのキスだ、しかも今度は自分からしてるし、と思ったけど、さっきのセックスの余韻が混じってく らくらして全然違うものだった。

唇が離れたら気が抜けて、意識が沈み込んだ。







疲れた身体を引きずって、一人浴室に入りお湯を調節しようと蛇口をひねる。

ふと、自分のペニスをみると何だか薄茶色く汚れてた。うわ、汚いな、と嫌悪感が走る。
だけど、指にも同じようなのがついてたので灯りにかざしてよくみると、血だった。

自分のされたこと、したことが不意に解ったような気がして胸の奥に鈍痛のような衝撃。ズルズルとその場にへたりこんだ。



一人だけさっぱりして外に出ると、体力を少し取り戻した渚が上半身裸のまま座り込んで、肩についた歯形の痣をぼんやりと見てた。そして僕を見て、朝から疲れた、 と怠そうな顔をする。何かを引きずってるのは明らかに僕の方で、渚の方はまるでさっきの事は夢だったとでもいわんばかりにいつも通りだった。


僕は何と答えたらいいのかわからず、黙って俯いた。とりあえず、痣を付けて悪かったとは言った。そしてふと、気になって訊いた。

「さっき…何を恐がってたの。」

「恐がってた…?誰が?」

「え、君が…だよ。」

「僕が?いつ?」

「いつって…覚えてないのか?」

きょとんとした顔で僕を見上げる奴の眼差しに曇りは無い。本当に記憶に無いのか。
僕は拍子抜けして、ヤッてる時のことだよ、と説明するのも憂鬱だから結局話を流した。
疑問だけが残る。何だったんだろう、あれは?

だけど渚はといえばこちらの思惑など知らず、目をカーテンの隙間からのぞく空に転じて朗らかに言うのだった。
「ねえ、見てよ。今日はすごく空が青い。」

薄暗い部屋に慣れた僕の目には眩しく白いだけだったけど、僕の前に座る渚の目はまっすぐに天空を向いていた。その澄んだ眼差しがひどく遠くを見てるように感じて、不意に僕は意味も無く恐くなった。漠然とした、でも確固たる———不安。


何かを言わなきゃ、と思った。けど、その時携帯が鳴ったんだ。
ミサトさんからで、綾波が助かったと知らされた。











あのとき…どう言うべきだったんだろう?

今でもよくわからない。
きっと、一生解らない気がする。



プラグスーツに包まれ、LCLが肺に満ちていく。
オレンジ色の、波。ああ、これか。あのとき弾けたイメージ。

一つに———なる。
…エヴァと。


肺に満ちる海からはほのかに血の香りがして、僕は一瞬だけその余韻を楽しんだ。
ターミナルドグマへと向かう彼を向かい打つ、その時が刻一刻と近づくのを感じながら。




END



【作者後記】
お粗末様でございました。
始まりの強引さがとんでもないのは言うまでもないですが、最後がまた、何とも微妙な終わり方ですいません…。
あと、全体的にバイオレントですねぇ…。
14歳っぽさも豪快に無視。最初のカヲルの行為なんて単なるセ クハラだなと自覚しています。要は最初カヲルのきっついセクハラで始まり、シンジがレイプで応戦したが何とか和姦に終わったという…考えて みれば何ともひどい話。貞カヲを踏襲して、カヲルは明らかに愛が入っちゃってるわけですが(←でも迷惑)。色々な意味で、今まで自分が書いた中でも視点がS入ってる度一番高いうちに入るです(汗
何でこうなってしまったんだか…妄想家なりに色々考えたんだけど、原作の二人がすれ違いぱなしなのに影響されたのはあると思います。いいわけですが。

それにしても貞エヴァ10巻、嫌いとかいいながら相手の家に居座ったり、あまつさえベット半分いけしゃあしゃあと使ってる貞シンの行動はなんだかとてつもなくエロいと思いますw(←日本語間違ってるよ)
ある意味、庵カヲシンよりも美味しすぎる関係というかいじりがいがある印象も…。


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