ねじれ過ぎた朝

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  One  

1.

寝苦しい夜が開けた。

眼を開けると見慣れない天井。雀の声。
一瞬自分がどこにいるのかわからなかった。
だけど横を向いた途端、視界に渚の寝顔。
一気に夕べの記憶が蘇った。最悪。


しかも嫌なことに、思わず凝視しているときに相手が目を覚ました。

「…あ、おはよう。」

寝ぼけ眼をこすりながら、相手は何事も無かったようなけろっとした声で挨拶する。そしてとどめの台詞。

「夕べは大変だったね。過呼吸症候群。」

答えずにそっぽを向いた。

「何、無視してんのさ。」

寝転がったまま黙って背中を向けてやり過ごす。起き上がってベットを出たかったけど、壁側にいるから渚が下りてくれないと動きにくかった。
さっさと洗面所にでも行ってくれるのを待っていたんだ。
だけど相手はしつこかった。

「こっち向きなよ、ねえ。」

肩に手をかけて、強引に自分の方を向かせようとする。

「…気安くさわるな。」

イライラしてちょっと乱暴に手を払ったら、既に僕の方に身を乗り出して半身起き上がっていた相手がバランスを崩した。

「わっ!」
「痛っ…」

半身とはいえ体重が突然振ってきて、僕は悲鳴を上げる。目を開けると渚が僕に半分覆い被さった格好のままあごを押さえていた。僕の肩の骨が出てる部分にぶつけたらしい。僕も痛かった。

「いきなり何するんだ。」
渚が僕の上に乗ったまま、上目使いで睨む。

「それはこっちの台詞だよ。早くそこどけよ!」
僕もカッときた。本当に朝からなんて最低な日。

…だけど、本当に最悪だったのはそれからだ。

僕には答えず、一瞬渚の目が何かを考えるように宙をさまよった。そして僕の頭の両側に手をついて身を浮かせるようにしたかと思うと、その目がすっと下を向いてあらぬ方向を…見る。

「…元気いいね。」

「……!」

何を言われたのか理解したとき、僕は硬直した。速攻ではねのけて殴り倒してやりたかったけど、羞恥で頭に血が上り反応が遅れた。それがいけなかった。

「うわっ!!!何…すっ」

事も有ろうにいきなり触られた。
びっくりなんてものじゃなかった。服の上からそこにつっと指が走る感触。ぞっと痺れるような快感が身体の中心を走り抜けた。ま、まずい。
他人にこうして触れられるのは…初めてだった。

「何って、見ての通り触ってるんだよ。」

信じられない、何こいつ。

「ねぇ、今どんな感じ?僕に触られて。」

「や、やめろよ…!」

「本当にやめたい?」

「あたりまえだろ…ぅあっ!」

ぐっと軽く握られてあっけなく悲鳴が出てしまう。服の上から包むような白くて長い指の感触。はねのけようとしても、動揺してるのとふくれあがったそこが熱く重たいのとで力が出ない。どうしよう。僕は激しく狼狽した。

「あは、呼吸が乱れたね。」
渚が笑ってる。昨夜「口をふさいで」くれたときと同じ笑い方で、僕はぞっとした。

「へ、変態…!」

「それ、どういう意味?」

「文字通りの…意味だよっ…あっ…」


そしてなす術も無く身を震わせたまま快楽に耐える僕を前に、渚はいよいよやりたい放題始めるのだった。
指がするりと寝間着のジャージの中に滑り込んでいったかと思うと下着の上からそっと確かめるように撫でて、呻き声をあげた僕に言う。

「すごい、反応してるよ。濡れてる。」

反応ってなんだよ、人を実験動物みたいに!と頭の中で突っ込んだけど声にならない。というか、その台詞に余計固く熱くなってしまう…自己嫌悪。

「やめ、やめろよ…こんなこと…」

抵抗も空しく、そのままあっという間にジャージがずり下げられる。

「どうして?いやなの?」

「あ、当たり前だろっ、男とこんな…。」

渚が、ふうん、といつもの淡々とした調子で言い、でも、こないだ偶然見たケーブルチャンネルじゃ男同士でこんなことしてたよ、と何やら激しく不穏な台詞。どういう番組見てるんだよ!と突っ込んだけどやはり相手はどこ吹く風。
そのまま一気に僕のをぱくりとくわえてきやがった。
…不覚にも、あっ、と大きな声が出た。





朝、カーテンの隙間から陽光が射してる清々しいばかりの部屋で、嫌いなはずの奴ととんでもないことになってる。それも相手のやりやすいように今はベットに 腰掛けてなされるがまま。自分の吐息の音がして、ぐちゃぐちゃやらしい水音が聞こえて、でもそれを気持ちよく思う自分が居て、頭がおかしくなりそうだっ た。

「あっ…あ、あ、あ、ちょ…と待っ…本気でやめ…」

ついに追いつめられて太ももに緊張が走ったとき、僕は慌てた。

「何?」

僕に肩を強くつかまれて、渚が一瞬口を放す。

「で…出そうだから、やめて。」

「何でさ。」

「…ベットが汚れる。」

「口の中に出せばいいだろ。」

「口って言ったって。…」

その言葉に喜んでいいのか、嫌悪していいのかわからなくて色んな気分がごっちゃになる。呆然とする僕を尻目に渚がにやっと僕を見上げて笑い、僕のから口を 放して自分の左手中指を舐めた。嫌な予感————そして、それは的中した。

「えっ!!う、はぁっ…な、何す…」

「ここも使うと、もっと好いらしいね。」

とんでもない場所をほぐされ、細くて長い指がぬるりと入ってきたとき僕は悲鳴を上げる他無かった。こいつ一体、どこでこんなこと覚えたんだ!

「…ここかな。」

何をどうやったのか解らない。突如、張り詰めた僕自身とは別に身体の奥深いところに強い快感が押し寄せのけぞって呻いた、その瞬間、前を強く吸われた。
頭が真っ白になって、僕は渚の口の中に射精した。



つづく
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