嫉妬
(1)
今週の土曜の夜、あいていないかな。話がしたいんだ、とシンジは切り出した。
うーん、土曜の夜はちょっと用事が入ってる。次の日はどうだい?
カヲルは何の悪びれる様子もなく、いつもの通りだ。
出来れば、土曜がいいな。早いほうが…うれしい。
すごく遅くなってもいいなら、あけられるよ。それこそ、終電がなくなって徹夜で話すことになるかもしれないけど…。それでもいいかい?
かまわない、とシンジはいった。どのみち、こんな気分じゃ穏やかな日曜を過ごせそうもない。レイに会うのも気が引けるし、アスカとはケンカ別れしたきりだ。かといって、一人でいると考えがめぐりめぐって止まらない。
ありがとう、と穏やかな声が受話器で答える。
実は、その日の夜は新宿でクラブイベントがあってね。友達の友達がDJをやるっていうので誘われたんだ。いつもは女の子オンリーのイベントらしいんだけ
ど、その日だけ特別にミックスで、ゲイフレンドリーなら誰でも入れるんだ。僕はそこにいるから、君もおいでよ。そこで会ってから、どこかに出て話をしよ
う。
え、ゲイ…?
シンジの躊躇が伝わったらしく、別に無理して来ようとしなくてもいいんだよ。ただの提案だから、とカヲルが苦笑する気配がした。
シンジはよっぽどそのまま断ろうかとも思ったが、ふと怖いもの見たさと、ある種の対抗心とが芽生えて、いや、行くよ、メールでアドレスとか送ってくれる?と頼んで電話を切った。