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悲しいくらいに、ひどく幸せだった。

恐かった。


握った手が温かったから。










zenith





肌に触れた瞬間、なんだかヤバい気がした。


いつもそれまで、主導権握ってたのは俺。
だって向こうは俺が最初だし。
俺はこの年で色々知りすぎてる。

思い出せばいつも、自分から誘うくせにどっか冷めてた。
ああ、こう来たか、じゃあこう返そう。そろそろ、この辺で声でも出してみようか、とか。
別に気持ちよくなかったわけじゃない。感情が入らなかったわけじゃない。
良かったけど、好きだったけど、同時に頭の中で計算が止まなかった。まあ、そういうこと。



でも今日はなんだかおかしかった。
思い切り、調子狂ってた。
あり得ないくらいに。


身体が熱い。
侵入される。
飲み込んでいく。
驚くほどに、容易く。

身体の中心から広がる感覚に、
自然に声が出る。


なんだこれ、
わけわかんねえ。

目、合わせらんない。
この俺が。



俺、どんな顔してんだろ、
全然コントロールできてない。
世界がくらくらして、感覚が氾濫する。

自分を取り戻したくて、
反射的に顔を覆った指も小刻みに震えた。

そうしてるうちにも、侵略される。
はじめは緩慢に、そして次第に激しさを増して。



これはただのケツの穴なんだとか、
そんなにして俺の腸管どーなるんだとか、
そういう解剖学的事実が遠のいてく。





…セックスって、
いつも後ろめたい、歓びだった。
(思い出すのはあの山の頂、暗い森、城壁の影。)

最初は恐怖、次に緊張。
相手のでかい身体の威圧感とか、指揮棒通りに踊れるかとか、粗相無く身体が耐えるかとか(…ケツだしね)。

でも途中から快感。
寄せては返す刺激にうめき続けるうちに何かが変わるんだまるで錬金術。
あり得ない。激しくいかがわしい。あの日々の事は今でも思い出すとたまに吐き気。

燃え尽きた後、虚脱感、ベタベタの身体洗ってシャワーから出るといつも凍えた。
そして嫌悪感。
俺は何やってんだろう、まあいいや大した事じゃない兄貴に逆らっても得な事ないしとか色々短く自問自答。

んでいつも結局は、考えても意味ないし、ってとりあえず軽く走って忘れる。

そう、そんなの。そんな、感じ。




それがお前とだと、何か違うようになるのかな?
…なれるのかな?









(…う。)



(ただの空っぽな管のくせに、
俺のどこか奥深くにお前が届いたのを感じた。)


(痙攣。)



呼ばれる、名前。


上り詰める、
瞬間。

どこへ?






もうそれ以上行き先の無い地点へ、






――――お前と。




END




【作者後記】

すいません、逝ってきます。
…しかもテーマ曲は、Love Shine A Light(Katty B.)(←殺。ベタベタの曲です)


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