願イ

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血に汚れた服。
凍てついたような瞳。

あの日、門を開けて帰ってきた兄さん。
だけど何かが違った。



黒い瞳の少年とその友人達。
来訪者達の弱さを僕がわらうと、虚ろだった兄さんの目に感情が宿る。

そして、

汚らわしい物をみるような目で、僕をみた。



ほどなく兄さんは父さんによばれ、
僕は一人紙人形をもてあそびながら、
二人の会話を盗み聞く。

嬉しそうに話していたのは、その少年のこと。


住み慣れた部屋から出て、兄さんは窓の外をじっと眺めた。
今まで僕が見た事も無いような表情をして。

それきり、戻ってこなかった。



でも、兄さん、

気づいていないんだね。

僕たちが汚いというのなら、この世界は何だというの。
世界が求めなければ、僕らは存在しなかった。
人が人を殺したいと思う限り、僕らはここにいる。
与えられた使命を全うする、ただそのためだけに、
全てをかけて、生きてきた。



なのに人々は僕らを忌み畏れ、ここに閉じ込めた。



兄さんは外の世界に行きたいと言う。
僕たちを生み捨てた、あの人々の場所に。

でも、ほんとうにそれでいいの。



ねえ、行かないでよ。
外なんて見ないで。
ここが僕らの生きる場所。優しく仄暗い閉じた世界。
草木と、花と、かすかな血の香りに守られて。

他者なんて存在しない、必要としない世界。
僕はあなた、あなたは僕。
互いに熱を持たない闇人形。
父様と、母様と、兄さまに作られた。



帰ってきてよ。

まぶしそうな目であいつをみないで。
そうやって、自分の中にある影を、闇を恥じてしまうの。


簡単すぎるよ。そんなの。

救いが外の世界に有ると思うなんて。



僕を見る、そのまなざしで貶めているのは自分自身。

そのことに、早く気づいて。





END


作者後記

WJ、カルトの「兄さんをとりもどすために…」に激萠…。
「紙人形」は、一応原作設定です。最近のWJネタ。



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