c'est en me protegeant que tu me tues.

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守られて

絶対に身を守れ、と教わった。
勝ち目の無い敵とは戦うなと。


そうして愛してくれた。
足手まといでも、守ってくれた。

生きろ、と言われた。

俺の思うように生きろ、と。


育てられ、守られ、そして抱かれる。
庇護され、所有される。
(所有するから庇護する。)


絡み付く黒髪。

愛されてた。
多分、愛してた。

守られてた。
だから、犯られてた。

それは代償。
犯すヤツが居るから、守られる。
犯すヤツに守られる。
守るヤツが犯る。


保護欲、支配欲、肉欲。

守られ、壊されてく。

(俺の事守ってくれる?
ああそう。
まだ、子供だからね。)

守られる。
盾となる大きいからだ。
夕焼け。
長く伸びる、影。


(守られるってどういうこと?
愛されてるってこと?
何だかすてきな響きだね?)

影が近づく。
太陽が遮られて、もう眩しい光は見えない。

覆い被さってくる。

重い身体。
広がる闇。
押し潰される。

恐怖。


侵入される。
俺の中に、俺でない物が入ってくる。
かき消される声。

内側から、壊されてく。


それでも、あんたは言った。
ある日、俺の目を覗き込んでた。
お前は俺よりもいつか強くなるよ、そうつぶやいて、笑った。

そしてどうなる?
あんたを忘れる?
それとも…殺してほしい?


漆黒の瞳を覗き込んだら、今すぐ壊したいくらい好きだから、そうなる前に俺を殺してよと言いたそうに瞬いた。

…そんなのまっぴらごめん。
だから逃げました。


だけど、あんたが見えなくなって、わけがわからなくなった。
自分の外側と内側の境目がつかないような気分のまま、
手当たり次第目に入ったものを切り裂きたい衝動と、
完膚なきまでに、自我の原型も留めぬ程犯されたい欲望に、
膨れ上がってふらふらと歩いた。

同時に、そんな自分がどうしようもなく気持ち悪いから、ひたすら強くなることを考えた。

試練があれば、敵がいれば、空っぽな気持ちを忘れられるから。
仲間を見つけて、謎を解いて、悪いヤツと戦って倒すんだ。そして俺たちヒーロー、気分は最高。

でも遊戯にはいつか終わりが来る。

そこから始まる暇つぶしの日常を怖れながら、日々は容赦なく過ぎて。



…あのひ、
ほんとは俺の方がゴンよりちょっとだけ強いから、
ねじ伏せる事だって出来たかもしれなかった。

だけどしなかった。
出来なかった。
出来なくてよかった。

もしやれてたら、今頃きっと死にたくなってた。

よかった。
繰り返さなくて。


なのに…

気分が晴れない。

同じ事をしてる気がする。
どうしてだか、また、悪い回路にはまってる気がする。

今度はゴンが俺を守り始めた。
安心して、信じてよって、抱きとめようとする。

それは、俺を外敵から守るとか、そういう意味じゃなくて。
(今でも力じゃ俺の方が強い。あいつの世話になんかならない。)

俺の心を、守るために。

ゴンが、
俺の中に、
入ってくる。

―――侵入される。



(でもいつか、出て行ってしまうんだ。
空っぽに穴が開いてしまうんだ。
わかっている。
わかっている。
わかっている。)



気持ち悪い。

恐怖。
危機。
ゴン。
セックス。
安堵。
不安。
そしてまた恐怖。
同じところの堂々巡り。




ああ、早くここから出たい。


…敵、現れてくれないかな。






END


〈著者後記〉

何だか、精神的に井戸の底を除いてるような気分のときに出てきてしまった文章です…(←今これ書いてるときはちょっと違うですよ)。わかりにくかったらすいません。ひとえに著者の表現力不足のせいですので。
それにしても困った事に、こういう一人称吐き出し系の文章は妙にさっさと書けるのが特徴で、他の、もっとずっと前から構想があって、ストーリーがしっかりしてるようなのを押しのけてひょいと仕上がってしまいます。これが出来た時、他に3つくらい書きかけのがあって、「いや、でも順番からいったらあっちの方を先に出すべきだよねぇ」と思って取っておいたんですが、どうもうまく進まないので、とりあえずあげる事にしました…。


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