邂 逅

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何?

これは…何なのかしら


白い指と指 同じ肌の色

すれ違いざま 腕をつかまれて

触れた瞬間 皮膚の裏側 火花が散った



「あなた、私と同じ感じがする。」


何故?

そんな私を見て 彼は微笑む

それもどうして?わからないことばかり


「…知りたい?」


わからないわ
言おうとして 声が出なかった


見つめる瞳 同じ赤いいろ

また捕まれた腕

絡みつく体温

引き寄せられる 至近距離

じっとして と耳に囁いた

頬と頬が 額と額がふれあって

彼が目を閉じたのが見えて

唇に 熱

からだが痺れたように動かなくなった



これは何

触れた場所から流れ込んできた

ひとつになる

境目が分からなくなる

知ってるわ この感じ



でも どこで?




(めくるめく心象風景。点滅する記憶。)
(君が君になる前の、過ぎ去った時間。)

(ほらね、僕たちはこうしてわかりあえてしまう。)
(だけど…)



(……ああ、なんて清々しい空虚だろう。)
(何もない。君の中には何も。まだ、何も。)


(まだ、何も、始まっていない。)


(初期化されてしまった魂。)


(あの無言の透明な領域は「彼女」が持っていった。)


(かけらだけを僕の中に残して。)






(遠い場所へ、逝った。)








(そうだね、ファースト。)
(やっと僕にもわかったよ。)

(僕たちは同じじゃなかった。)

(…そして君たちも、同じじゃない。)








何?

これは何かしら


流れ込んでくるわ

侵入してくる



暖かくて
どろりとした
まとわりつく 感じ


流れこみ 満たしていく


情報 記憶

フィフスの時間 色彩 空っぽのわたしとは違う

ううん それだけじゃけない



暗い流れの中

誰かがみえた 気がした


めをつぶる 横顔 







…………碇くん?











息が詰まる
ゆっくりと胸がしめつけられる感じ

苦しい
痛い

痛い?

いえ
これは…この感じは……







(切ない。)






知らないはずの感情
(初めて知った想い。)


だけど 
何故かなつかしい 痛み




唇が はなれた



「…違うのは、これまで誰と出会い、どう生きてきたかってこと。
君と僕は似てるけど、同じじゃない。以前君が僕にそう言ったんだよ。
…覚えてないの?」



知らない
覚えてない


フィフスのこころ
わたしのじゃない

わからない




なのに 










————どうして私 泣いてるの。


FIN


【作者後記】
ウタダさんの主題歌を聴いててふと思いついた小品。ひたすら映画が待ち遠しいです…。
ちなみに、貞カヲはキスくらいはしたという設定。それにしてもアヤナミは難しいですね(汗


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